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鷹匠町武家屋敷「武鷹館」

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旧館林藩士住宅茅葺屋根の工事について

更新日:2023年2月17日

はじめに

武鷹館全体 現在

旧館林藩士住宅は平成11年に館林市指定重要文化財に指定され、平成12年から13年にかけて、今の大手町に移築復元されました。
館林の歴史を肌で感じられる貴重な場所として、市民の憩いの場所としても、地元の方々に愛されています。

武鷹館屋根アップ
移築から20年以上経ち、茅の抜けなど劣化が目立つようになりました。
そこで、令和4年度に茅葺かやぶき屋根の補修を行います。
近年は茅葺屋根を持つ家の減少もあり、葺替ふきかえのようすは滅多に見られなくなった貴重な機会でもあります。


工事のようす

実際の工事のようすを写真で紹介します。随時、更新予定です。
下記リンクからもそれぞれの段階をご覧いただけます。
〈2段目〉〈3段目〉〈4段目〉〈5段目〉〈6段目〉〈7段目〉
〈棟の解体のようす〉〈棟下の茅の葺替え〉〈刈込み〉
〈差茅終了〉〈ミニコラム➀-昔の知恵-〉〈ミニコラム➁-職人の技-〉

工事の内容

今回の工事は全面差茅工事です。
差茅さしがやは、茅を総入替えするのではなく、傷んだ部分のみを取り除き、新しい茅を足していく手法です。
傷んでいない茅を再利用する、昔ながらの工法です。

工事全体の工程

【1】足場づくり→【2】劣化部分の除去及び差茅→【3】棟づくり→【4】刈込み


足場のようす
DSC_0899_de.JPG

DSC_0937_de.JPG
差茅作業のようす
アゲボウという道具を使って古い茅を持ち上げ、悪くなった部分を引き出し、劣化したり腐ってしまったりした部分を切り落とします。その後、空間を埋めるように新しい茅を差し込みます。
屋根の下から外周を一周するように作業を進め、徐々に上まで替えていきます。

DSC_0911_de.JPG

アゲボウ
2段目
作業済部分との境目がはっきりとわかります。
1段が終わると、アルキと呼ばれる竹の足場を設置し、次の段に取りかかります。
2段目

茅を差した後、叩いて揃える雁木ガンギを使い、なだらかに仕上げます。
2段目アップ
3段目
1段につき5寸(約15センチメートル)ごと、4層の茅が重なっています。
差茅は古い茅を持ち上げ、間に新しい茅を差し込んでいきます。
作業後は、古い茅と新しい茅の色の違いから、縞模様のようにみえます。
3段目
4段目
半分を超えてきました。竹の足場に乗っての作業が主になってきます。 
4段目
5段目
前回同様に渡良瀬遊水地の茅を使っています。
5段目
6段目
上に近づくほど1段分の面積は少なくなるので、作業時間も少なくなっていきます。

6段目
7段目
棟の手前まできました。
七段目
棟の解体のようす
さしかえ

表面に近い部分は劣化していますが、中はまだ使えることがよくわかります。
棟解体開始遠景

棟解体開始アップ
棟下の茅の葺替え
雨だれによる劣化がひどく、棟の下の部分は「差し茅」ではなく、すべて取り替える「葺替え」を行います。

sakoutei.jpg

1_DSCF5900.JPG

押鉾オシボコ(茅を押さえる所)の縛り目に杉皮を挟み、
紐を伝って雨が染み込みにくくします。
オシボコ説明いり

9段目
3_DSCF5935.JPG

葺替え作業が終了し、いよいよ棟づくりに入ります。
4_DSCF6021.JPG

縞模様がよくわかります。
DSC_1193_de.JPG
[注:この写真は時系列と異なります]


sairasutokakou.jpg
[注:この写真は時系列と異なります。写真を加工しています]


棟づくり(より詳しい写真はミニコラム➁へ)
棟の下地となる下丸シタマル

1_DSC_1101nikahitu.jpg

上丸ウワマルで棟の形や重厚感を出します。

4_DSCF6118nikahitu.jpg


棟のトミ部分に杉皮を敷きました。
7_DSCF6192.JPG

マクラを取りつけ、蓑茅ミノガヤを並べます。
samakuraminogaya.jpg

9_DSC_1129.JPG

最後にケントウギ(頂上の太い竹)がつきました。これから刈込みが始まります。
竹つき
刈込みのようす
茅を切り揃えていきます。
茅抜き2

茅抜カヤヌキという道具も使います。見た目はペンチに似ています。
これでへこんでいる部分の茅を抜き出し、均等に揃えて刈込んでいきます。
茅抜き1

アルキを外しながら少しずつ進めていきます。
DSC_1183_de.JPG

残すところ、あと一面となりました。
DSC_1188_de.JPG

丁寧に叩いて仕上げていきます。
DSC_1192_de.JPG
差茅終了!
足場も外れ、屋根の全工程が終了しました!
ここから防虫のための工程を挟み、いよいよ公開に向けて準備していきます。
DSC_1211.jpg


ミニコラム➀-昔の知恵-
茅葺屋根の茅は全て同じ方向、同じ角度で葺かれています。
45度の勾配になるよう積み上げることで、雨が内側に流れ込まない設計になります。
葦勾配アップ

古い茅は黒くなり、全て使えないのでは、と思ってしまいます。
しかし、黒くなっているのは先の5センチメートル程度で、中は綺麗なまま残っています。
雨が内側に入っていかないからこそ、雨漏りせず再利用もできる。
長い年月、屋根材として使用されてきた理由がわかります。
葦古さアップ
ミニコラム➁-職人の技-
➀棟木の上に茅を並べていき棟の下地となる下丸シタマルをつくります。
(下丸の写真はこちら
➁棟の鑑部分にあたる、屋根の顔とも言えるトミ部分を作っていきます。
1_DSCF6061.JPG

➂富の形を整え、針棒ハリボウで紐を取りながら固定していきます。
手前の葦を貫いている白い棒が針棒です。綺麗な三角形を作るため、
崩れないよう手作業で整えていきます。
➃その後、上丸で棟の形や重厚感を出し、富部分との一体感を出します。
(上丸の写真はこちら
2_DSCF6069.JPG

➄富部分に杉皮を乗せ、綺麗に切り揃えます。
3_DSCF6154.JPG

➅あらかじめ茅を束ね縄で巻き、マクラを山形に整えます。
4_DSCF6188.JPG

➆棟の端部2箇所に枕を乗せ、蓑茅ミノガヤを間に葺いていきます。
5_DSC_1115.JPG

➇荒縄で編んだ竹簀タケズを被せ、固定します。
6_DSCF6309.JPG

➈棟下にモモダケ(半分に割った竹)を置き、細く割いた竹製の袈裟ケサ
挟み込んでいきます。
7_DSC_1131_de.jpg

➉最後に飾りの部分。今回の飾りは切富キリトミという仕上げで、この形で格式などを示しています。頂部にはケントウギ(一番太い竹)を乗せます。
天に向かって反るようにクサビを打ち込んで竹をしならせ、端は竹を斜めに切り仕上げています。節の部分を利用して装飾的にしており、細かい部分に職人のこだわりと心意気を感じることができます。
9_DSC_1154_.JPG



このHPに掲載している情報は簡易なものになります。移築時の茅葺屋根の補修について詳しく知りたい、差し茅ではなく葺替えのようすが知りたい!という方は、本市が発行しております『田山花袋旧居―保存修理(茅葺屋根葺替え)調査報告書―』『館林の武家屋敷―旧館林藩士住宅の復元と整備―』を館林市立図書館等でご覧ください。

このHPは今回の茅葺職人に聞き取りしたものをもとにしており、上記調査報告書とは用語・表記等が異なりますのでご留意ください。